『モノづくりブランド NAGOYA』の審査を終えてモノづくりブランドNAGOYA

『モノづくりブランド NAGOYA』の第3期・受賞企業が決定した

この顕彰制度は名古屋商工会議所の若い職員達が、モノづくりのメッカである名古屋の火を絶やさないようにするために自分達で何ができるかと考えて作った制度である。しかも、応募資格・地域を限定せず、幅広くグレーター名古屋圏としてとらえた点も従来にない柔軟さだと思う。

このプロジェクトは3ヶ年計画であり、今回が最後の顕彰となる。心配していたレベルの低下は全くなく、しかも常に前年を上回る応募をしていただいた。審査をしながら、改めて名古屋圏の工業力の底力を実感している。

選ばれた顕彰企業は、いずれも今日の日本のモノづくりを支えるメーカーばかりである。自らの技術や製品に満足することなく、絶えず技術を磨き、新しいチャレンジを続けており、まさに「縁の下の力持ち」といえる企業群と言えよう。

私は日本中の中小企業を訪問して歩いているが、中部地域の中小企業にはびっくりするほど高い技術を持ちながら、世間に全く知られることなく地味にコツコツとモノづくりを続けている企業が多い。おそらく力のある大企業が沢山あって、その会社の仕事をしていれば安定的にのびてこられたからだろう。戦後の日本産業が、優れた品質と価格競争力を背景に世界市場において躍進を続けてこられた大きな理由の一つが、優秀な中小企業が技術開発をおこたらず、高い品質の部品を安く、安定的に供給し、しかも顧客の厳しい注文にも臨機応変に対応し続けてきたからである。

しかしグローバルコンペティションの時代になり、発注企業と協力企業の関係も大きく変わってきた。逆に言えば、鍛えられた技術をもって世界に挑戦するチャンスが到来したとも言える。この際ぜひその技術力を、世界の企業のために使っていただきたい。

顕彰事業はひとまず終了するが、選ばれた企業には、NAGOYAのモノづくりがブランドとして確固たる地位を築くためのイメージリーダーとして、更なる活躍を期待したい。また、名古屋商工会議所の「モノづくりブランド NAGOYA」という事業が、名古屋のモノづくりに更なる付加価値を与え、報われることの少ない中小企業、うまずたゆまず努力をしていることにすら誰も気がついてくれない場所で「良い物を作りたい。顧客に喜んでもらいたい」と黙々と努力を続ける中小企業にとって励ましとなることを願っている。

政策研究大学院大学
教授 橋本 久義

●プロフィール
橋本久義(はしもと・ひさよし)  1945年生まれ。1969年東京大学工学部精密機械工学科卒業、通商産業省(現経済産業省)入省。西ドイツ駐在。通商産業省機械情報産業局鋳鍛造課長、中小企業庁技術課長、通商産業省立地指導課長、工業技術院総務部総括研究開発官などを歴任。1994年埼玉大学大学院政策科学研究科教授。1997年政策研究大学院大学教授。2002年名古屋商工会議所『モノづくりブランドNAGOYA』選考委員会委員長。

※データ・内容は2005年5月現在のものです。